mixiデザインに関する商人的態度

えー、10月1日でしたか。mixiなる大変たくさんの方が御利用なさっているサービスのデザインが一新された、と。

わたくしの見たところ、確かに変わってますが「うっひゃ、あやつめ、やりおったわい」と膝を叩くほどのドラスティックな変更ではなく、「なんだ画面の大筋は同じか…」と正直肩透かしを食らった感があり、しかしまあ、あまり大胆なことすると反発もあるだろうし、まあmixiだし、このへんが落としどころかな…といったところでした。
ところが世間様ではすでにあれでも激しくお気に召さないご様子であります。わたくしの、いわゆるマイミクですか、その中でも激しく修正を求めるコミュニティに入っただかなにかの人もいて鼻息も荒く、いやまあみなさんお若い。御健勝のようでなによりでございますな。

専門家関係顛末

ところで、そこから違った方向で今世間をにぎわせているのがこちらでございます。
今回のmixiのリニューアルについて - 専門家に聞く
ここでタイトルにもある「専門家」というのがのちのち重要になってくるのでありますが、ともあれなんか適当にそのへんの牛丼屋で卵かき混ぜてるやつ見繕って「こないだのさ、mixiのほら、なんか変わったでしょおじさんどう思う?変よね?使いにくいよね?」みたいなインタビューというのでは、決して断じて絶対になにがなんでも違う、そういう記事に仕立てたのであろう物件であります。

中には「なるほど、それはそうだ」というお話をされている方もいらっしゃるのですが、まあ谷口とおっしゃる方の「H属性」とはなんぞや?思いがけないその淫靡な響きにわたくしなどは日夜悶々として過ごしておるわけですが、なんといっても注目は寺田あつしでございます。

「いまだにphpではなくperlで動いているあたり」

http://profile.allabout.co.jp/ask/qa_detail.php/6863

とくにこれです。はてなブックマークでも、あーあ、こりゃすげえや。ってな塩梅で、いまやすっかり業界にほのぼのとした笑いを提供くださった人気者にのし上がったのでありました。

コレに対するややマジメな反応としましては寺田さんの発言がラヴリーすぎる件や、http://neta.ywcafe.net/000785.htmlなどがありますので、「え?あれのどこが悪いって言の?」という寺田あつしは見るとよかろうと思いますが、でもまあ、こういう風に考えている人もいまだに多いようであります。つまり、技術のことはよくわかんなくてとりあえず上場とかそういったビジネス周りの話にもっていきたい寺田は別格として、PHPPerlとかの話ですね。

そういった方々の頭の中はきっと、Perl4とかCGIとかそういう言葉が出てきてしまうのであって、もう出てきて10年以上経つmod_perlなんぞも知らず、CatalystやらSledge、Jiftyですか、そういったフレームワークやらなにやらあることすら…まあこれはいいですか、実際以前ひょいと流れて来たmixiのソースを見る限りではそういうったものは使ってない風でしたので。しかしある意味あれをもって「身内の」「技術や知識が古く、独自の思考をもった温室エンジニア」と断じる気もわからないでもないですが。
とはいえ、表面の「デザイン」を変えるのと同じ調子でそういったアプリケーション部分も「リニューアル」できると本気で思っているのかと思うと、こういう工数計算をする社長の下でお仕事なさる方の苦労がしのばれるというものです。

デザインの種類

私が申し上げるまでもなく、デザインには

  1. 色とかフォントとか四角とか丸とかいう表面上の問題
  2. ページ遷移など構造上の問題
  3. パフォーマンスやらスケーラビリティやら機能拡張のしやすさなどを勘案したハード&ソフト上の構造

まあ他にもありそうですがざっと考えてもこんな感じで、などということは皆様御承知のとおりでございますが、寺田あつしはどうも1についての質問に全部ごっちゃにしてさらに社会的ケーザイ的な情報も加味して回答するという親切心が横溢しているようであります。

つまりはphpだなんだという話は、あまりにperl4ぐちゃぐちゃなおかげで機能拡張ができません、とか落ちて落ちて困ってますとか、そういう話に持ち出すべきもので見た目がどうこうといった問題ではございません。まあこれは十分寺田も承知の上で書いているのでございましょうが。

ただ、ひとつあるとすればURLですか。mixiの方は、認証下のサービスだからでしょうか、あまりそのあたり気を払ってないようですが、ユーザに見えるURLというやつは基本的にAPIとも考えてよいのでありまして、たとえば日記に他の日記を記述するような場合を鑑みて、/view_diary.pl?id=云々よりもうちょっとオツな洒落の効いてるURLにすれば、とも思いますが、まあそこは好みでございますね。

言語をアレコレ言うこと

…というかそもそもこの拡張子をもってPerlであると断じておりますが、view_diary.plという名前で中身はCで書き換えてあります、とかいうと根底から話が違ってしまいますなあ。

さてユーザにとっては実装がPHPだろうがPerlだろうがPythonだろうがLispだろうが、どうでもいいっちゃあどうでもいい話であります。
以前、これはジャズ系プレイヤーが読む雑誌に載っていたギャグマンガで、バンドの若者がステージから
「ぼくたちのサウンドはsus4を使って(ミクソリディアンだったかも)いるから音楽理論的にも優れてるんだ!」
と叫び、もちろん観客ポカーン、といったものがありましたが、まあそういう話でありまして、よく学生に多いようでございますが、「どの言語を勉強したらよいですか」これなんぞはプロの職人に言わせますと「食えそうならなんでもやったらよかんべえ」という答えになるわけでして、生涯ひとつの言語さえ覚えれば食いッぱぐれがない、なんて甘い世界ではございません。

ですから、この寺田問題について「Perlは今でもAmazonやこのはてなやその他いろーんなところで」とかそういう、なんてんですか、往年のセガだプレステだ任天堂だ、って戦争ごっこを思い出しますな、そういうレベルの話とはちょっと別のことも考えていたほうが良かろうと存じます。

どんな言語やフレームワークでも、ぐちゃぐちゃでメンテ不能なコードなんて、まあ大抵あっという間にできるものであります。そんなときにPerlだからダメなんだPHPRailsだ、と渡り歩いたところでまあダメなやつは何をやらせてもダメと相場は決まっておりますから跡は推して知るべしなのであります。

デザインの御不満への対応

話をmixiのデザインに戻しますが、しかしちょっとまあ、「他人のデザインをどうこう言う前に自分のサイトをもうちょっとどうにかせえ」と言われる前に逃げ出さねばなりません。…ずいぶん話が長うなってしまいましたが。

じゃあ一点だけ。わたくしの界隈ではmixi新デザインが白っぽいとか、眩しいなんて声もありました。これですね、ちょっと他人事ではないですよ。というのは私はここもそうだし本家も基本背景白ですので。

しかしまあここで、
「そりゃおめぇのモニタ明るすぎるんじゃね?ツマミだかボタンだかいじってなんとかしろってのこのトーヘンボクが」
と鼻糞ほじりながら答えていてはあきんどとして失格でございます。

ここは、
「いらっしゃいませ、毎度御ひいきに、は?白っぽい?いやはや、そんなはずは…ではちょいと失礼して…どーれ…ふむふむ…なんと!これは眩しゅうございますな!」
と大げさに驚き、
「いやはや、これは見ておられぬ。もう目に突き刺さるようでございます。これではたまりません。お客様のおっしゃるとおりでございます。あいやしばし、しばしお待ちを、今代わりをお持ちいたしますので」
と奥に下がり、背景は#FFFFFFのそのままに文字色だけ多少濃い目に直したものを持ってきて、
「どうでございましょう。さきほどの突き刺さるような白、あれはそれなりに評判が良いと問屋から聞きましたので南蛮から取り寄せたものでしたがどーも、わたくしどもの趣味にはあわないようでございます。
それにくらべてこちらは丹波より取り寄せた白。京風の柔らかな、風格のある、優しい女人の手のひらのような白にてございます。…お、やはりお分かりになりますか。いやこれはおそれいります。さすがお目が高い。…ええ、はい、いやもう、試すようなことをいたしまして、大変に御無礼いたしました。さすがは目が肥えていらっしゃると評判の…」
などと持ち上げまくれば客も
「ほれ見たことか。これこそ本来の白。風格、耽美さ、幽玄さにおいて先ほどとは比べ物にならぬ。のう長兵衛。やればできるではないか。うむ、これからはこの丹波を使うが良い」
などと調子に乗りますから、すかさずあわせて
「ははあ、この長兵衛、今日は勉強をさせていただきました。ではこの丹波の白、使わせていただきますとともに、本日からまた心を新たに入れ替え、またこの日を忘れぬよう番頭から小僧に至るまで当店では朝な夕なにお客様の御名前をお唱えすることをこれより家訓といたしますので、なにとぞ御容赦のほどを…」
とへりくだれば、
「うむ、良い心がけじゃ。ゆめ忘れるでないぞ。これからも精進いたせ」
などと機嫌よく帰っていくこと間違いないでしょう。

さらにそれを呼び止め、
「実はここだけの話、特別なサービスがございまして…お目が高いお客様だけに…いえ、実は今試験中でして、芸能人や省庁、大企業の方のみにこっそり公開中の…ええ、ええ、ただしなにぶんそういう方向けですのでお値段はざっとン万円の予定ですがお客様には特別、特別に無料、ええ、ええ、ただ手配料で月に千円ほどいただきますがもうこれは単なる誤差のようなものでして、あの、この話はくれぐれも、くれぐれも御内密にどうか…ええ、ありがとうございます、では手続きをしてまいりますので…」
などと怪しげなサービスを売りつければ百点満点でございましょう。

All Aboutに呼ばれて少々はしゃいでしまった商人の方々も、ただmixiをあげつらうばかりではなく、むしろその中で「いや、これは良い変更ですよ」と変わったことをいい、「ただし…」といくつか些細な点をあげ、「是非うちにデザインについて御相談くださればいろいろとお話することもあると思います」と呼びかけてみたりするやり方を試してみればよかったのでは、と思いつつ、これにて今晩はお開きにいたします。